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Channel: マエストロ時津英裕のブログ
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ペットは飼いたいが

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僕が子供の頃、家には「ロン」という犬がいた。本当になついて従順な犬であった。しかし、ペットとは必ず別れが来る。ある夜、外から「ギャオー」という悲鳴にも似た泣き声が聞こえて、駆けつけてみると、既に母がぐったりしたロンをさすっていた。そのうち、ロンは立っていられなくなり、地面に横たわり、そのまま母親にさすられながら世を去った。この文章を書いていても涙が出てくるくらい、従順で、愛らしい犬だった。僕はたまらず自分の部屋に行き、号泣してしまった。遺体は、血統書を添えて保健所に処理をお願いした。

もう二度と、あんなに悲しい思いをしたくないと、うちではペットを飼うのを止めた。それから月日が経ち、1996年、車庫の荷物棚に、子猫が3匹死んでいるのを発見。もう一匹、息も絶え絶えに辛うじて生きている。どうやら母猫がいなくなってしまったらしい。これを見殺しにする事は、いくらなんでも出来ない。ミルクを与えると、すぐになついた。母親を呼んで叫びまくったためか、声がかれてしまっており、鳴き声が悲惨で、ピーピーと鳴くので、「ピー」と名付けた。上品で器量良し、野良猫とは思えない器量である。こうなると、情が湧いてしまうが、家に入れるつもりは無かった。

そして、外で餌を与えていたのだが、この猫はメスだったようで、ボーイフレンドが出来た。真っ白な猫で、「シロ」と名付けた。毎日、庭の松の木の上で待ち合わせ、時間を忘れて遊んでいる。ところが、このボーイフレンドが筋金入りの気性が激しいドラ猫で、全くなついてくれない。そんな中、台風が来て大嵐になった。嵐の翌日、ピーがいなくなってしまった。いくら呼んでも姿を現さない。シロは、毎日待ち合わせ場所の松の木の上で待っている。猫は雨を嫌うのだが、雨が降ろうと風が吹こうと松の木の上で、目を真っ赤に腫らして待っている。もう見ていられない。たまらず、新聞折り込みに「たずね猫」の写真入りの広告を出した。沢山の電話がかかって来たが、どれも違う。その後、家から遥かに離れた場所の方から電話がかかってきて、特徴を聞くと、「もう間違いない」。どうやら嵐の中、他人の車に逃げ込み、遠く離れた場所で捨てられたらしかった。でも、見つかって本当に良かった。

これで、もうこんなに悲しい思いはしたくないと、ピーを家に入れた。しかし、困ったのがボーイフレンドのシロである。どうしてもなついてくれない。三か月かけて何とかなつかせ、家に入れた。オスとメスなので、ほっとくとどんどん子供が出来るので、手術をしてもらった。一日中二匹で家中を走り回り、夜になると身を寄せ合って一緒に寝ている。本当に、性格は正反対なのに、本当に仲のいい二匹であった。この二匹は、運命の赤い糸で結ばれていたのだと思う。

それで、二匹の猫と仲良く生活していたのだが、やはりペットとは必ず「別れ」が来る。僕が家に帰ると、必ず出迎えに駆けつけてくるのだが、その日もすぐに駆けつけてピョンピョンと飛び跳ねながら甘えてきた。それで、トイレに行って、出てくると、ピーがぐったりとして動かない。既に死んでいた。こんな突然の別れは予想していなかったので、ショックを受けた。ボーイフレンドのシロも、後を追うように、間もなく死んだ。

運命に結び付けられた二匹の猫。別れは唐突だったが、僕は二匹に最善の愛情を注いだ。二匹は幸せだったと信じている。天国でも仲よく遊んでいるに違いない。

やはり、ペットを飼うのは楽しいが、必ず別れが来る。あんな悲しい思いは、もう二度と御免である。しかし、やむなく飼わざるを得ない事態が来るかもしれない。

ペットを飼う人は、必ず別れが来ることを覚悟する必要が有る。飼えなくなって捨てるなどもっての外である。スーパーの駐車場などで、しきりに駆け寄ってくる捨てられたと思われる犬や猫を見る事が有るが、涙を呑んで立ち去る。元飼い主が、誰かに拾ってもらえるように、色々なアクセサリで飾り付けられた犬や猫もいて、誰にも拾われなかったら保健所行き(安楽死)である。心が痛まない筈が無い。今後、どんなペットと出会いが有るか、無いか、わからないが、飼い始めたら、最期まで見取るつもりである。


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