恋の話である。僕が桐朋に通っていた頃、ある先生(名前は忘れた)が、「チェリビダッケの録音を聴く会」という会を行っておられ、そこで常連だったM.Mさんに一目惚れしてしまった。とにかく笑顔が素敵な女性で、学校でも有名で、「スマイリーM」(Mは姓)と呼ばれていた男性学生の憧れの的であった。ちなみにヴァイオリン科で、僕と同じ江藤門下であった。
僕の頭の中は、彼女以外無くなり、何とか恋を成就させたいと、友達も協力してくれたのだが、彼女は僕の方を向いてくれない。それでも彼女に対する想いは募るばかりで、もう正常な精神状態を保つ事さえ不可能な程、彼女に夢中であった。
そんな中、江藤先生のレッスンに行ったのだが、僕の前のレッスンが彼女であった。僕は、「お疲れ様」と声をかける事が精いっぱいであった。そして僕はレッスンを受け、戻ってきたら、彼女が僕を待っていて、「一緒に帰りましょう」と言われた。その後、一緒に吉祥寺に行き、食事や買い物など、僕としては、これ以上考えられない幸せを味わった。それで、僕は彼女への気持ちを告白したのだが、彼女はOKしてくれない。「どうして?」という質問に、彼女は「言えない。私の相手は、まだわからないけど決まっているの」と言う。これで、その日の思い出深い出来事は終わった。彼女がどうして僕を待っていて、一緒に帰ろうと誘ったのかは謎である。
その後、彼女の女友達からショッキングな相談を受けた。実は、彼女は世界基督教統一神霊協会の信者であり、完全に洗脳されており、いくら説得してもどうにもならないとの事。僕は絶句したが、彼女の友人によると、僕ほど彼女の気持ちをわかっている人はいないから、何とか脱会するように説得して欲しいとの事。
それから僕は、統一教会について調べ尽くし、彼女が脱会するよう行動したのだが、もはや彼女を支配しているマインドコントロールは強固で、どうにもならなかった。僕は、涙を呑んで、彼女を諦めた。
数年前に入ってきた情報だが、彼女は韓国で合同結婚式に出席し、韓国人と結婚生活をしているらしい。もうどうにもならない。しかし、彼女は、僕にとって、永遠のマドンナである。あの素敵な笑顔は忘れようにも忘れられない。
何とも言いようが無い、学生時代の、ほろ苦く切ない思い出である。今日はどういうわけか、彼女の素敵な笑顔が思い起こされて仕方が無い。どうにもならない気持ちを、ブログで吐露するしかない、個人的な忘れられない思い出話でした。