以前も書いたかもしれないが、僕は、モーツァルトの最高傑作は「魔笛」だと思っており、本当に素晴らしいのだが、途中で善悪が逆転するというストーリー上の矛盾が有り、実際の上演で、これを解決する事は不可能で、僕個人としては、セリフ抜きの演奏会形式の上演で、モーツァルトが書いた音楽に浸る事がベストだと思っている。
さて、「魔笛」には沢山の録音が有る。まず、最悪なのはサヴァリッシュ盤。これは絶対に買ってはならない。これは論外としても、色々なCDにはそれぞれ特徴が有り、ベスト盤を選び出すのは難しい。
とにかく、このオペラは上演が難しいオペラだが、モーツァルトの最高傑作である事は間違いない。
CDを物色すると、まずモーツァルトのスペシャリストであったカール・ベームの録音が目につく。しかし、ベルリン・フィルと録音した新盤は、ヴンダーリッヒのタミーノ、ホッターの弁者が素晴らしく、これらにベーム/ベルリン・フィルが加わったレチタティーヴォは完璧で、これ以上の演奏は、永遠に現れないであろう。しかし、女声陣が酷く、特に「夜の女王」のピータースは最低で、また、パパゲーノのフィッシャー=ディースカウもあまりにも巧妙で、評価が分かれるところである。
結局、僕のベストは、ベームがウィーン・フィルと1955年に録音した、モーツァルト生誕200周年記念盤という事になる。初めて聴いた時は、歌手が小粒かと思っていたが、今回、CDを入手し、ウィーンのスタイルで統一されたアンサンブルの素晴らしさ。全く歌手に不満を感じない。
カール・ベームは、ヨーロッパでは、1970年代になって、「巨匠」としてのカリスマを得たとされているが、僕の判断では、この「魔笛」1955年盤を録音した時点で、既に「巨匠」であったと思う。また、当時のウィーン・フィルは、現在のウィーン・フィルでは得られない味わいが有り、これはもう失われた素晴らしい芸術である。
とにかく、僕のベストは、ベーム/ウィーン・フィル盤である。音質も、録音は古いが、CDになって格段に音質が良くなり、僕が昔から持っているLPとは比較にならず、全く不満を感じない。もちろんステレオ録音である。セリフは無いが、僕にとっては不要である。
モーツァルトの最高傑作「魔笛」で、これ以上の演奏は無い。HMVで輸入盤が入手できる。モーツァルトが好きな人には、絶対に聴いて欲しい。
余談だが、父親の暴力、横暴などに苦しめられ、結果的に両親が自殺。精神的ショックから立ち直るのに時間がかかり、とうとう独身のまま50歳になってしまった。しかし、精神年齢は若いままである。純粋なパパゲーノとパパゲーナのような恋は、もう出来ないのだろうか。
それにしても、モーツァルトは何と素晴らしい作曲家なのであろうか。。