ゴルバチョフの英断により、ソビエトは崩壊し、東側諸国が次々に崩壊し、ベルリンの壁も崩れ、世界は新しい時代になった。これは、画期的な出来事であった。
ソビエトの歪んだ社会主義や、スターリンなどの蛮行は許し難いが、音楽文化は最高に成熟していた。
政治と音楽は関係ない。ソビエト時代の東側諸国の音楽レベルは非常に高かった。ソビエトの、歴史的民謡、労働歌、軍歌、政権讃美歌、映画音楽、歌謡曲など、優れた音楽が多い。ショスタコーヴィチが書いた曲も有る。これらが、ソビエト崩壊とともに、完全に抹殺されている。数多い名唱、名演が埋もれてしまった。
僕は、ソビエトが崩壊した時に、事を察し、ロシア民謡のレコードを買いまくった。今は全て廃盤である。とにかく素晴らしい。曲も歌唱も最高である。膨大な録音の全てを紹介することは不可能だが、「代表」ともいうべき二曲を紹介する。
「モスクワ郊外の夕べ」
当時のモスクワ放送のインターバル・シグナルに使われた程、旧ソビエト国民が、知らない事が無い名曲。フルシチョフ訪米後は、アメリカでもヒットした。
「収穫の歌」
ソビエト時代の映画音楽らしい。収穫に励む農民の喜びを歌った曲で、こんなに素晴らしく感動的な音楽が抹殺されているとは、暗澹たる気持ちになる。この演奏は、作曲したドエナエフスキーが指揮した歴史的名演である。