僕は、フルトヴェングラーの「第九」は、過去に発売された全ての録音を聴いていると思うが、もっとも有名なのは、もちろん1951年のバイロイト盤であるが、音質を度外視して演奏を評価すると、1954年のバイロイト音楽祭でのライヴが一番好きだった。過度に劇的にならず、音楽の構造を明晰に出し、アンサンブルが崩れる事も無い。
しかし、今まで手に入る録音は、劣悪な音質の海賊盤で、とても「観賞用」にはならないものであった。しかし、遂に今回オルフェオから良好な音質のCDがリリースされ、何度も弾いたり聴いたりした「第九」だが、久々に感動した。
特に、決め所のティンバニが凄い。これは想像だが、若き日のテーリヒェンが叩いているのではないか。猛スピードの終結でも崩れることなく見事に叩ききっている。
とにかく、この「第九」は、晩年のフルトヴェングラーが到達した最高の演奏であり、一人でも多くの人に聴いて欲しい。
ベートーヴェンの「第九」に、新しい「名盤」が誕生した事を喜びたい。最近はコンサートに行く事も減ったが、日本で12月と言えば「第九」。今年は飛び切りの「第九」で12月を迎えた。来年がいい年になりますように。