私が「最高」と評価する1954年バイロイトのフルトヴェングラーのベートーヴェン「第九」の別音源が出た。ジャケットを見ると、バリトンがウェーバーからエーデルマンに変わっている。しかし、聴いてみたところ、これはエーデルマンではない。どう聴いてもオルフェオ盤と同じ演奏である。音質は、オルフェオ盤の方がわずかにいいか、という感じ。ただ、オルフェオ盤は拍手がカットされているが、ARCHIPEL盤は、ほんのわずかだが、拍手が聴こえる。
また、ARCHIPEL盤は二枚組で、二枚目に三楽章と終楽章のリハーサル風景が収められている。フルトヴェングラーの「第九」のリハーサル風景は、かつて発売された事は無かったと思う。これが初出であろう。ひょっとすると、リハーサルではなくゲネプロかもしれない。貴重な録音で、音質も、本番の録音と大差ない。
フルトヴェングラーのファンなら、オルフェオ盤とARCHIPEL盤の両方を買うべきであろう。とにかく、この「第九」は、僕がかつて聴いたフルトヴェングラーの「第九」(10種類以上、多分全て聴いていると思う)としては最高であり、フルトヴェングラーが最晩年に到達した境地を現している演奏として、一人でも多くの人に聴いて欲しい。