今回、ヘッドフォンを新しくし、ヘッドフォン・アンプをどこにつなぐか迷ったのだが、理屈だけで判断すれば、CDプレーヤーに直結するのがベストなはずなのだが、必ずしもそうならないのがオーディオの奥深さ。結局マランツ#7のプリアウト端子に接続するのがベストという結論に達した。これは理にかなっている。プリアンプとパワーアンプはペアであるが、この場合、ヘッドフォン・アンプがパワーアンプに該当するからである。
それにしても、素晴らしい音である。電気の知識も無いオーディオ評論家なる職業の人間が、「真空管アンプはCDのデジタル臭さを消す」とまことしやかにオーディオ雑誌に書いており、「本当かねぇ」と思っていたが、オリジナルマランツ#7を使ってみて、本当である事が分かった。
マランツ#7はとてつもないプリアンプである。単なる増幅器だから、回路自体はシンプルだが、蓋を開けて中を見ると、高密度ベークによるラグ配線。美しい配線の引き回しなど、これはもう芸術品である。これはとても真似できない。単に同じ回路で組めば同じ音が出るというものではない。これはオリジナルマランツ#7を入手して初めてわかった事である。それまでは、同じ回路で自作したアンプを使っていたが、オリジナルの音を初めて聴いた時はショックを受けた。
メーカーも50年以上プリアンプの王者として君臨するとは考えていなかったようで、真空管ソケットやピンジャックの取り付けがリベットであるなど、今後のメンテナンスに心配な面は有るが、それでもマランツ#7は不滅の名機である。とにかく、運を天に任せて、壊れるまで使うつもりである。
とにかく、これを超えるプリアンプは二度と現れないであろう。なお、真空管アンプは、使う真空管によって音が激変する。中国球などもっての他で、せめてロシア製。出来ればテレフンケン・ダイヤマーク。僕も色々試したが、やはり、テレフンケン・ダイヤマーク以上の音が出る球は無かった。
僕が持っているマランツ#7は、店頭展示品で殆ど使われていない50年以上昔に作られたオリジナルであり、ヴィンテージ・コンデンサなど、全て当時のままで、全く手を付けられていない。この素晴らしい音は、当時のパーツからしか出ない。オリジナルマランツ#7には、修理の際オリジナル以外の部品に交換されたものや、改造されたものも多く、オリジナルの音を保っているものは少ない。また、修理などすべて自分で行う必要が有り、誰にでもはお勧めできない。
不滅の人気にあやかってレプリカも作られたが、使われているコンデンサなどが異なり、僕はレプリカの音は知らないが、少なくとも中国製の真空管だけは交換するべきである。テレフンケンとまでは行かなくても、例えばロシア製ムラードなどでも音が激変するはずである。これをしないと「宝の持ち腐れ」である。中国球は安かろう悪かろうなので、良い音を求めるのであれば、絶対に使ってはならない。
僕のマランツ#7がいつまで良い音を奏でてくれるかわからないが、楽しめるうちに思う存分楽しみたい。