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Channel: マエストロ時津英裕のブログ
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今日はマフィアの日

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マフィアというイタリアのシチリア島を本拠地にする怖い集団が有る事は有名なので、知らない人はいないと思うが、僕のようにヴァイオリンを弾く者にとっても、これは他人事ではない。

というのも、マフィア系の楽器専門の窃盗集団が、日本も含む世界中で暗躍しており、盗まれたら最後、絶対に出てこない。唯一の例外は、ベルリン・フィルのコンサートマスター、安永徹さんのグァダニーニが盗まれた時、カラヤンがマフィアに連絡したところ、マフィアはカラヤンに一目置いており、すぐに出てきたという事が有った。しかし、何がしかのお金は動いたのだろう。弦楽器は高額でインフレに強く、泥棒の格好のターゲットになっているのだと思われる。

マフィアは怖い。アコーディオン奏者のCOBAさんが、イタリアに留学していた時に、シチリア島に行き、タクシーに乗った。その時の運転手さんとの会話。

COBA「マフィアは今でもシチリア島で幅を利かせているんですか?」
運転手「ここではマフィアの話はしない方がいいよ」
COBA「なぜですか?」
運転手「だって、僕がマフィアじゃないって、どうしてわかるんだい?」

COBAさんはゾッとしたそうである。

マフィアは怖い。以前、ヴァイオリンについて超長文の詳しい解説を書いたが、自分が持っている楽器については詳述を避けた。まあ、マフィアに狙われるような楽器は持っていないので、大丈夫だとは思うが、用心に越した事は無い。とにかく、一度狙われたら最後と言われている。

日本は治安がいい国だと言われているが、これは油断できない。オーケストラの仕事の時など、ゲネプロが終わった後、鍵がかかる個室をもらえるコンサートマスターなどは別として、殆どの楽員が楽器を楽屋に置いて食事に出る。これは極めて危険である。僕は、個室をもらえた時を除き、必ず楽器を持って出る。海外から来日したオーケストラのメンバーたちは、仮に鍵がかかる個室をもらえても、楽器は片時たりとも手放さない。海外ではこれが当たり前なので、日本も見習うべきである。

2日連続で同じ会場でコンサートが有るような時、日本のオーケストラの場合、殆どのオーケストラの楽員は、楽屋に楽器を置いて帰る。もちろん、最後の楽員が出た時点で、楽屋には鍵をかけるが、鍵などプロの手にかかればピッキングで簡単に破られる。僕は楽器が近くに無いと落ち着かないので持って帰る。楽器店には時々「楽器が盗まれました。持ち込まれたらご連絡ください」等という連絡先と写真付きの張り紙が、工房に貼られている事が有るが、見つかる事は、まず無い。楽器は、とうの昔に海外に飛ばされていると思われる。日本人は、もっと用心深くなるべきである。

僕が可愛がってもらったヴァイオリン商人兼修理名人の故・出田(いずた)さんによると、10本以上入っている弓のケースの中から、ラミー(フランスの名人の一人で、時価数百万円)の弓だけが盗まれた(ケースの中で、ラミー以外は安物であった)とか、ショウケースに展示していたG.A.ロッカ(モダンイタリーの最高峰の一人で、時価数千万円)を盗まれた事が有るらしい。弓にはラベルなども無く、安物には目もくれず、ラミーだけを見抜いて盗んだ手口、G.A.ロッカの時は、楽器だけでなく、スタンドまで盗んでいき、何事も無かったかのように、他の楽器をきれいに並べて立ち去る(これだと盗まれた事に気付きにくい)手口といい、出田氏によると、「これはプロの仕業に間違いない」との事。もちろん、盗まれた楽器は見つからなかった。その後、出田さんは、閉店中は、ネズミ一匹走っただけでもセキュリティ会社に連絡が行くような高感度センサーを始め、店のセキュリティをガチガチに固めた。そして、職員も番号を知らない楽器専用の金庫を備え、名器は展示せずに金庫に保管し、鍵は出田氏が片時たりとも手放さなかった。イズタ・バイオリンの玄関から店に入ると、センサーが反応してチャイムが鳴り、店員が飛び出してくる。とにかく徹底的にセキュリティを固め、それ以来、泥棒にやられた事は無いとの事。

とにかく、日本と言えども油断はできない。用心するに越した事は無い。マフィアには気を付けなければ。


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