僕は16歳で第1級アマチュア無線技士(以下1アマ)の免許を取得したが(今は無線通信は行っていない)、当時の試験は一筋縄ではいかない記述式の大変に難しい試験であった。無線工学では最終的な答えを導くまでの途中経過も記述しないと得点がもらえない。法規の試験では、法令文を一言一句違わず記述しないと得点がもらえなかった。
僕が受験した時は、無線工学で、常用対数 log5.7 を算出しなければならないという難問が出たが、計算尺を持っていたので助かった。電気通信術もモールスの欧文、和文、それぞれの送信、受信の試験が有り、和文の受信が天王山と言われていた。
最近の動向をネットで調べて唖然とした。記述試験はマークシート式で、電気通信術では和文が無くなり、欧文の受信だけとの事。送信の試験も無い。こんなに試験を易しくして、何の意味が有るのか。
日本はアマチュア無線に対する見識が甘く、最下級の第4級アマチュア無線技士(以下4アマ)でもかなりの事が出来る。特に、養成課程講習会という制度が有り、レベルの低い4アマを大量生産している。ちなみに養成課程講習会で免許を取った人は、「講習会アマ」と馬鹿にされている。
レベルの低い無線従事者に電波を解放しても、ろくな事が無い。僕が無線をやっていた頃も、オフバンドで平気で通信する悪質な例も有ったが、今はどうなっているのだろう。
4アマでもかなりの事が出来るのに、上級の2アマ、1アマの試験を易しくして何の意味が有るのか。はっきり言えば、これは電気通信管理局の怠慢である。難しい試験を行うには、それ相応の能力を持った試験官が必要になる。今やそのような高度な能力を持った人が不足しているのだろう。
難しい試験を受けて1アマを取得した僕としては、最近のアマチュア無線の試験のレベル低下は腹立たしい限りである。4アマを大量生産する事は、辛うじて良しとしても、見かけ倒しの上級者を大量生産する事には、意味が感じられない。
アマチュア無線の電波帯は、冒険家など、地上との通信手段がどうしても必要な人など、必然的に必要な人にのみ開放するべきである。レベルの低い4アマが電波を占領するばかりか、低レベルな上級アマがハイパワーで電波を汚しまくる事だけは、絶対に避けなければならない。電波を効率よく有効活用される時代が来ることを願っている。