大指揮者トスカニーニの愛弟子で、トスカニーニが、「私と同じように指揮する」と言ったというグィド・カンテルリ。悲しい事に、飛行機事故で、36歳の生涯を閉じた。当時「死の床」にあったトスカニーニには、ショックを与えてはいけないという事で、この事故は秘密にされた。トスカニーニは、死ぬまで「グィドはどうして見舞いに来ないのか」と繰り返していたという。カンテルリの演奏を聴くと、確かにトスカニーニに似ている。しかし、現在聴けるトスカニーニの演奏は、80歳を過ぎた晩年の演奏が殆どで、アンサンブルなどに乱れが無いともいえない(それが魅力という見方も有るのだが)、その点、カンテルリはトスカニーニに似ているが、アンサンブルも完璧で、もし飛行機事故が無ければ、20世紀最高の指揮者の一人として、名声をものにしていた事は間違いない。半端な才能ではない。そのカンテルリが、EMIに残した全ての録音が、9枚組CDとして発売された。早速予約して購入。まだ全部聴いていないが、かねてより知っていたシューマンの交響曲第4番は、フルトヴェングラーと双璧といえる超名演である。感慨を新たにした。限定盤との事で、これを機会にカンテルリの素晴らしい演奏に触れられることをお勧めしたい。CD9枚組だが、タワーレコードの通販で、2051円。これはお買い得である。僕はポイントを使って500円ほどで手に入れた。願わくば、カンテルリがEMIではなくRCAと契約していれば、NBC交響楽団と超絶的な録音を残せたと思われるだけに残念だが、必ずしも技術的に一流とは言えないフィルハーモニア管弦楽団(ホルンのデニス・ブレインだけは別格)が、カンテルリが振るとNBC交響楽団のような響きになる。海賊盤であれば、カンテルリがNBC交響楽団を振った、例えばハイドンの「V字」など、ものすごい名演が聴ける。これを機に、カンテルリに再び脚光を浴びる事を願いたい。
http://tower.jp/item/3044722/Guido-Cantelli---Mozart,-Beethoven,-Schubert,-etc<限定盤>