僕は、2011年1月に胃を切って以来、演奏活動を休止している。それに、もういい歳(50歳)であり、楽壇に復帰できるかどうかはわからない(無理のような気がする)。しかし、自分の今までの「実績」(特に作曲家コルンゴルト関係)には誇りを持っている。
楽壇復帰が出来なくても、いつ声がかかっても「仕事」が出来るように、準備だけはしておきたい。しかし、演奏技術はともかくとしても、胃を切って体形が変わってしまい、舞台衣装が全て着られなくなってしまった。
特に、ウィーンで買ってきた燕尾服、特注で作った黒服(タキシード兼用)が着られなくなってしまったのは、何とも残念である。しかし、衣装が無いと、舞台には出られない。
とりあえず必要なのは、燕尾服、黒服(タキシード兼用)、白タキシード(上着)である。燕尾服と白タキの上着は、もう安い店で作ってもらおうと思っているが、黒服(タキシード兼用)だけは、音楽以外でも、冠婚葬祭で着る事になるので、最高の服を作りたい。
両親の葬式の時にでも、親戚の間で、僕の喪服姿を見て、「やはり音楽家、着こなしが違う」と、評判になっていたらしい。僕としても、これだけは絶対に譲れない。
経済的な限界が有るので、燕尾服と白タキは安く作りたいが、黒服(タキシード兼用)だけは、プライドにかけて、「最高」の服を作りたい。超一流紳士服店で、カシミアが入った最高の生地で作るのが理想である。
どんなに最高の生地でも、100万円を超える事は無いだろう。とりあえず、黒服だけは、意地にかけて、生涯最後の「最高の服」を作りたい。
「最高の服」を作っても、一生、着る機会が無いかもしれない。しかし、これだけは、「音楽家」の「最後の意地」である。