チャイコフスキーの「白鳥の湖」といえば、もちろん名曲中の名曲だが、最近に至るまで、オーケストレーションに変な金管や打楽器や繰り返しが追加されたり、誰が書いたかわからない「踊るだけ」が目的の曲が追加されたり、オリジナルの「プティパ、イワノフ」の振り付けが変更されるなど、散々な目に遭ってきたバレエ音楽であった。
そこで、過去にも書いたが、演出のユリ・グリゴローヴィチと、指揮のアルギス・ジュライチスが、「変な改変」を、全て排除し、最高の演出とオーケストラ、それに、今や伝説になっているプリセツカヤの「オデット、オディール」による1976年の映像が、海賊DVDだが、今でも入手できる。
恐らく、これは史上最高の「白鳥の湖」であろう。プリセツカヤの素晴らしさは言うまでも無く、他の役も当たり役が揃っており、ボリショイ劇場オーケストラのしびれるような弦、ヴァイオリン・ソロやハープの素晴らしさ、それに、トランペット・ソロが、伝説のヴィルトゥオーゾ、ドクシツェル(トランペットで「熊蜂の飛行」を演奏できた人は、この人だけであろう)なのである。観客の反応も素晴らしい。
とにかく、これ以上の「白鳥の湖」は考えられないので、この記事を見た方は、一刻も早く入手される事を、お勧めします。海賊ビデオなので画像が暗く、一部に傷も有りますが、曲がりなりにもカラーであり、これ以上の「白鳥」は、絶対に有りません。