市を二分した物凄い選挙の思い出である。
明日から期日前投票が始まる。僕の家は、投票所の小学校まで遠いので、明日、近くの役所で期日前投票するつもりである。
もう大昔の話だが、事実上の自民党一党独裁だった頃、僕の母方の祖父は、元市議会議長で地元の自民党の重鎮で、「何が何でも自民党」と子供の頃から言われ続け、僕はへそを曲げて、選挙権をもらっても、選挙に行く事は無かった。
そんな中、長年勤めた市長が引退し、後任を争う選挙で保守系の候補が二人立候補した。前市長は祖父の「政敵」で、祖父と前市長の一騎打ちの形になり、市を二分する物凄い選挙戦になった。
形勢は、前市長が支持する候補者が有利と言われ続けたが、投票日に祖父から「頼むから投票に行ってくれ!!」と言われて投票に行き、これは僕が初めて投票に行った選挙になった。この選挙の投票率は、何と97%だった。これは日本記録ではないか。
開票結果は、祖父が支持する候補が僅差で勝ち、ケーブルテレビの開票速報の司会者と解説者は、前市長支持だったようで、何とも気まずい雰囲気がスタジオに漂っていた。
実は、投票日の前日に町に出たのだが、何とそこで、前市長と前市長が支持する候補者が、「最後のお願い」と称する、いわゆる「泣き落とし」を行っており、印象が悪かった。僕はこれが敗因ではないかと思っている。
その後、祖父が「選挙権は、国民に与えられた唯一の参政権なのだから、選挙には行け。白票でもいいから行って来い」と言われ、その後、祖父は他界し、僕はこれを祖父の遺言だと思って、以来、選挙には行くようにしている。祖父の通夜には「政敵」だった前市長も来て、記帳だけして逃げるように帰ろうとされたので、「どうぞ上がってください!」と母が言うと「私にはそんな資格は有りません」と言われるのを無理に上がってもらい、焼香してもらった。前市長が来てくださったのは、本当に嬉しかった。
縁とは不思議なもので、僕が所用で上京して帰りの飛行機が着陸し、降りようと並んでいて後ろを見ると、何と、「次の選挙には出ない」と引退を表明した市長がいるではないか!僕は声をかけ、「お疲れ様でした。あの初当選の時の物凄い選挙で、僕はあなたに投票したんですよ」と言うと、「それは本当にありがとう!」と両手で握手してくれた。
皆さんも、せっかくもらった選挙権なのだから、誰に投票してもいいから、選挙には行きましょう!