「ワイパックス」というマイナー・トランキライザーが有る。決して強い薬ではなく、よく処方される薬なのだが、これが僕に合わなかった。
ヨーロッパ旅行の直前に処方されたのだが、新宿のワシントンホテルに泊まり、眠りについたのだが、ホテルの部屋で女性と話している夢(妄想)を見て、「じゃあおやすみ」と言って部屋を出たのだが、そこで気が付いた。
何と、パンツ一枚でホテルの廊下に立っていたのである。ホテルのドアはオートロックで、カギも無いので、部屋に入ることができない。仕方なく、物凄く恥ずかしかったが、フロントに電話して、羽織りと合鍵を持って来てもらった。
「この薬は合わない」と判断し、全てのワイパックスを捨てた。トランキライザーには、大きく分けて、強力なメジャー・トランキライザーと、マイルドなマイナー・トランキライザーが有るのだが、マイナー・トランキライザーでも、合わないと、このような現象が起こる事が有る。
後に、かかりつけのお医者さんに、この話をしたのだが、これの事を、「譫妄」(せんもう)と言うのだそうである。「ごめんなさい」と言われ、ワイパックスは、もちろん止めたのだが、強い薬でも弱い薬でも、このような想像を絶する事態が起こる事が有るので、服用には細心の注意が必要である。